やくそく

ピンポンとチャイムがなって
はーいと出てみると
目の前には
犬がいた。
いや、正しくは犬だと思う者がいた。

まず、帽子をかぶっている
なんだか、ゴットファーザーで
みんながかぶっていたような帽子だ
そして、背広を着ている
黒に少し直線の模様があるタイプだ
そして革靴
新品で高そうなピカピカの靴だ。

それらをまとい2本足できちんと立っている。
背筋も伸びてはいるが、やはりお犬様
足は真直ぐ伸ばせないのか
少し曲がっている

私は誰かのどっきりだと思い
回りをきょろきょろと見回した。
すると
犬の方から、
「ご主人さま、ご主人様」
と言ってきた

手の込んだいたずらである
どこか、首輪あたりから
スピカーでも仕込んであるに違いない
と見てみると
首輪もしていないし
それらしき機械も見当たらない
「ご主人様」
はて?私はこの犬にご主人様と言われる筋合いはいっさいない.

「誰?」
「初めまして」
「私は世界愛犬協会から派遣されたジョンです」
「はあ、それで」
「はい、そこから中央アフリカのアンギラという
小さい島国のオズボーン・サンジェントケルー様から、
指令を受けここに参りました。」
「指令?」
「はい、かわいがってもらえとのことでした」
「いや、ぼくはその人知らないよ」
「アフリカに知り合いはいないんだよ」

「あ、お金の心配ですか?
大丈夫です。もうオズボーン様から支払われていますのでご安心下さい」
「いや、記憶に無いんだよ。その人」
「はい?あなたさまのおじいさまの母様のお父様の
昔の恋人がオズボーンさまのひいおばあさんだったらしく、
その時の約束だそうです。
思い出しましたか?」
「ぜんぜん」
「じゃ、今すぐおじいさまの母様のお父様に確かめてくださいよ」
「いや、もう死んでいるだろうし、無理だよ」
「帰ってくれ」
「いや、私はかわいがってもらうまでは、帰れません」
「じゃなきゃなんでこんな極東まで来なきゃならないんですか?」
「ところで、約束のお城のようにかわいい犬小屋はどこです?」
「だから、今言ったばかりじゃないか
そんな、約束は知らないんだよ」
「いや、約束は守ってもらわないと
 かわいいお嫁さんもお願いしますよ」
「おれだって、先月ふられたばっかりだよ
 なんで、見知らぬ犬のお前の嫁の世話をしなきゃなんねんだ!」
「まあ、まあ、その辺はね!おいおいということで、
 それより、パーティをお願いします
 せっかくの一張羅ですから」
「しかし、その前に」
とことことリビングに行き
ソファーの横に座っていびきをかいて寝だした。
長旅でよほど、つかれていたんだろう。

私は哀れなわんちゃんの様子を少し見る事にした。

 

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