秋の風

ピンポンとチャイムがなって
はーいと出てみると
そこには
誰もいなかった。

いや、正確には、
誰かがいた形跡は感じた。
体温?湿気?匂い。
そんなものが、残っていた。

そんな時に風が吹いた。
秋の風が、気持ちよかった。

それを感じ、いまここに立っていた人が
なんとなく、綺麗な女性だと確信する。
特にわずかに残った香りが、
私の想像をかき立てた。

すると

ピンポーンと上の階から音が

しばらくするとまた、違う場所でピンポンと音がした。

きっと家に来たのもその人だろうと思い、
私は階段でしばらく待ち伏せをすることにした。

すると、カンカン音をたてやってきた。

「ちくしょう、誰もいねーじゃないか」

こんな性格じゃ、顔は期待出来ないなと思った。
おそるおそる、おりてきた彼女の足もとから、顔を覗くと。

おお、アイドル顔負けのかわいい子ではないか。
急にドキドキしてきた。
彼女は私をチラッと見て通り過ぎようとした。
私は思い切って、「あの・・・」

「はい?」いかめしい顔で彼女が私を見た。
「あの、今、チャイムを、、、鳴らしませんでしたか?」
「・・・・ああ〜」
「あ、あの〜、気になって、気になって、あの〜、、、何でも買います!」
私は舞い上がってつい、訳のわからない言い訳をしだしてしまった。
ピンポ〜ンとチャイムが上の階から聞こえてきた。
彼女は「おばさーん!」と大きな声で上の階に向かってさけんだ。
「な〜に?」と、上からひょいと顔を出したいかにも中年というかんじのおばさんに向かって、
「なんだか知らないけど、この人、買いたいんだって!」
「え!、ほんと〜」何とも嫌な猫なで声で、やってきた。

彼女は携帯をかけ出して「ちきしょう、まだいね〜な」
なんていって
外へ出て行った。
残された私は
なんとも、強引なおばはんに
40万もする掃除機を買わされてしまうのである。

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