赤い糸

赤い糸なんて信じなかった
ほんの昨日までは

朝起きてみると、
僕の腕が妙に引っかかる。
腕を見てみると
赤い糸が引っかかっていた。
よく見ると、それは、小指にきっちりと巻き付いている。

誰かのいたずらかな
と、思って
はずそうとするが、
はずれない。

はずれないどころか、
はさみで切る事もできない。

よっぽど固いのかと思えば、
やわらかい。

もしや、本物?っと、うたがいながら
糸の先を目指してたぐり寄せてみる。

どこまでも続く糸に興味を憶え
外に出てどこまでもどこまでも
糸のある方へ行くがなかなかたどりつけない。

もし、これが本物で地球の裏側の人だったら
僕はいったいどうするんだ。

なーんてことをお気楽に考えていると
角を曲がった所で

猫が

猫が私の糸と繋がっている。

ああ〜道理でもてないわけだ。

僕の結婚相手は猫だったなんて・・・

まあ、確かにそれなりにかわいい猫だ
たぶん僕の好きなタイプの猫だろう。
だけど、それは、猫として好きなだけであって、
恋愛対象、ましてや、嫁にするほど好きかと言われたら
それは違うだろう。

と道の真ん中で、悲壮感あふれる。
世界一くらい顔で突っ立ていると

猫はいぶかしげな顔をして
何処かへ行ってしまった。

猫はただ単に僕の赤い糸の上に乗っていただけだったのである。

いやはやなんとも
安堵の気持ちと
これから起きる事への期待感がまた、ふつふつと蘇ってきた。

右へ左へ
電車に乗ってずいぶん遠くへ来てしまった。

もうすっかり日も暮れてしまったが、
まだまだ、この糸は終わりそうも無い
へとへとになってまた、角を曲がると
ついに、糸の終点が見えた。

暗闇で良くはわからないが
僕はあわてて、そこまで駆け寄った。

すると

5円玉

僕の赤い糸は5円玉にくくられていた。

 

僕の小指と5円玉

この先は無い。

きっちり、終わっている。

これが、生涯の伴侶かと思うと
なんだか、先ほどの猫ちゃんのほうが、
幾分かましだろう。

この5円玉を拾う為に
僕はいったいいくらのお金を使ったのか?
財布の中はもうほとんどカラである。

どっと疲れも出て、肩を落とし
そっと、五円玉を覗くと

そこには、美人が
まさに僕好みの美人が
見えた!

どかーんと雷が落ちたような衝撃!

これはまさに

赤い糸が言いたかった事はこの事か!

僕はまっすぐ、彼女の方へ走った。
とうぜん、彼女も僕と同じ雷が落ちていると信じて・・・・。

先ほどの5円玉の存在さえも忘れてしまうほどに。

5円玉は僕の手から落ちた。

ちゃりーん。アスファルトを回る5円玉

猛スピードで後ろからやってくる車

5円玉を踏み、パンク!

ハンドルを取られ
2人に突っ込む車

間一髪、彼女に飛び込む僕!

目の前には大破した車

僕と彼女は抱き合ったまま

止まった時間が動き出したとき、

愛が目覚めた。

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