同窓会の君

僕は久しぶりの同窓会にドキドキしながら向っている。
中三の夏。好きだったあの子。ふざけあった河原。
そんなものを思い出しながら、足早にお店に向った。

同窓会は実に15年ぶり、
30才になったみんなが、いったいどんなふうに変わったか楽しみだ。
僕は高校は1人だけ都内の進学校に行ってしまったために
地元のクラスメートとは本当に縁が切れてしまった。

受験校の競争社会、とても地元で遊んでいる状態ではなかったのだ。
学校までは電車で1時間半もかかるので、
同級生と偶然に電車で出会う事もまったくなかった。

楽しかった中三のころ、
それが僕の唯一の青春だったのかもしれない。

二十歳位まではたまに同窓会の案内が来ていたが
当時は、とてもまだ行ける状態ではなかった。
無視をしていたら、もう案内もこなくなっていた

ところが、先日、ひさしぶりに案内が来た。
「卒業30周年!集まれ!」だって、
もう、みんな30才になるんだよな。
こんな僕でも感慨にふけるな〜。

ってことで、今パーティー会場にやってきた。

ドアを開けると

やってるやってる。
立食だけど、みんなぎゅうぎゅうだ。
きっと、30才ってことで、幹事が考えたより集まったんだろう。
そりゃそうだ、僕が来ているくらいだもんな。

中は薄暗く、僕がお目当てのあの子、中川さんはなかなか見つけられない。
店員からビールをもらいうろついていると、

「やまだ〜!」と、呼ばれた。
「なつかし〜な!お前がいるとは」
「変わってないな〜お前!」

誰だ?こいつ。
老けてるな〜、
本当に30か?
中年太りで禿げかかって

「なんだよ、忘れちゃったのかよ。加藤だよ。太ったからわかんないんだろう」

お〜、加藤!野球部の4番!太ったな〜別人だよ
「ごめん、わかんなかったよ。久しぶりなもんで」
「よいよい、本当にお前は変わらんな」
ははは、なんて笑っても、僕の目はキョロキョロ泳いでいた。

「なんだ。好きな子でも探しているんか!」
「いや、違うよ。なんか、みんな懐かしくって」
「そうかそうか」
「ところで、中川さんは来てるかな?」
「ん、なんだ。中川好きだったのか?」
「いや、そうじゃないんだけど」
「よかよか。あいつも、もうおばさんだぞ!」
「そんなことないよ!」
「はははは」

すると彼が
「なかがわ〜!」と
遠くの席にた彼女を呼び出してくれた。

「じゃ、邪魔者は去るか」といってくれた。
ありがたい。彼女と2人で話せる。

「言っとくけど、彼女は独り身だが、去年離婚して子供も2人いるからな」
僕は、正直その言葉にがっかりした。
しかし、それは誰のせいでもない。
今は久しぶりに彼女と話せる幸せがうれしい。

「ひさしぶり〜」とやってきた。
暗い店だから、遠くではわからなかったが、
う!やはりというか、離婚疲れか
老けたな。
なんだか、派手な化粧が場末のホステスみたいだ。
僕の知っている彼女は
素顔の15才が最後だから、
しかたがないといえば、しかたがないが。

それでも彼女である事に間違えはなく。
話しだすと2人とも中学時代にもどるのは
そう時間はかからなかった。

「あなた、変わらないのね」
「そう、もうおっさんだよ」
「そんな事はないわ。結婚は?」
「いや、してないんだ。未だに1人」
「・・・・・」
僕はわかっているが、つい
「君は?」
と聞いてしまった。

「わたし?わたしもひとりよ。・・・・子供はいるけどね」
「あ、おれ子供好きだよ」
「ははは、今難しい時期なのよ、もう大変」
「そうなんだ」
なんだか、彼女の老けた顔が大変さがより浮き上がって見えた。

でも
「俺、実はお前の事、好きだったんだ」
「あら、うれしい。じゃあ結婚する?」
なんて、冗談とも本気ともとれる会話にドキマギした。

「でもだめね。子供がいるもん」
僕はあせって
「そんな事はないよ」というと
「ううん、ダメよ。子供も難しい時期なのよ」
「今、いくつなの。」
「14才」

え!
彼女は中学を出てすぐ結婚したのか?
「ウワ〜大きいね」
「何言ってるの。あそこのマサエなんて、もう23才だって、こども」
「え!それはいくらなんでも・・ありえないよ」
「何言ってんの。大学卒業してすぐ結婚したらそんなもんじゃない。」
「え!」
「もうみんな45才じゃ、おじさんおばさんよね」
「え?中川も」
「なにいってんの、あなたもでしょう。
 見た目は30そこそこにしか見えないけど」
「そんな?」
ぼくはいったいどうしてしまったんだろう。
僕以外、全員が45才?
そういえば、はがきには卒業30周年!と書かれていた。
僕は悩んで
「今年は何年だっけ?」
「なにいってんの2026年でしょ。しっかりしてよ」
「・・・・」
それで、みんな老けていたのか。
どうやら、異空間にとらわれてしまったか?
悪い酒を飲み過ぎたらしい。

「あ、あ〜、30才の時にでも会っていたらね
 違う人生だったかもね」
「え!」
「31で出来ちゃった結婚なのよ。私。」
「わたしも、きみ、結構好きだったんだぞ!」
「え!」
「もう、遅いわね」
「・・・・」
「いや!遅くない!」
「え?だめよ。無理だわ」
「いや、そうじゃなくて、30なら、まだ遅くないんだ!」
「なにいってるの?」
「結婚しよう!」
「無理よ。酔ってるの?」
「酔ってるけど、違うんだ!結婚しよう!」
「うふふ、うれしい。今だけでもうれしいわ〜」
「いや、本気だ!結婚しよう!」
「うふふ、30才にでも戻れたらね」
「絶対だぞ!絶対!」
「タイムマシーンでも発明してくれるの?うふふ」

僕はあわてて、店を出た。
元の時間に戻る為に・・・・。

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