冷凍人間の行方

今回から1週間くらいシュールシリーズをいかせていただきます。
ある意味、まったく、何も思いつかない段階で、いきなり書く所存であります。
じゃあ、てきとうに書き出します。
+ - + - + - + - + - + - + - + - + - + - + - + - 

時は24世紀
タイムカプセルの冷凍からさめた私は
おもむろにお腹を押さえだした。

「いてて、いててえ、腹いて〜 」

まったくもって、冷凍技術が進んだおかげで
人間は何百年も先にまた、生き返ることができるようになったのはいいが、
この、目覚める時の、寒さったらありゃしない。
お腹も壊すよ そりゃ。
300年たっても、まだ、技術革新が出来ないとは
こりゃ、期待出来ないな。

と思いながら、私は受付を探した。

たぶん、この小型マイクみたいなのが受付だろう。

「あ〜、もしもし?あの〜起きましたけど?」
「はい、こちら板橋中央ドック、認証するまでしばらくお待ち下さい」
「あのですね。そんな事より、寒くってお腹冷えちゃってですね。トイレ行きたいんですけどね」
「認証が終わるまでは、そこを動かないでください」
「起床住民登録が終わるまで、どこにも行かないでください。
 万一、いなくなりますと、全ての権利が失効する恐れがあります」
「うわ〜、そりゃ大変だ。だけどですね。もう、お腹がですね
 限界なんですよ。いてて」
私は、裸でお腹を押さえて足をバタバタと動かした。
「もうしばらく、お待ちください」
「あのですね。ここ寒いんですよ。なにか、タオルか、服をもらえませんか?
 それにですね。もう、いたた、もれちゃいそうなんです。」
「もうしばらく、お待ちください」
「いや、あの、あけろ〜! おい、いつまで待たせんだ! 」
「ここで、う○こするぞ!」
「もうしばらく、お待ちください」
「いや、もうでる。いや、出す。もう、無理」
「もうしばらく、お待ちください」
「無理、ホント無理、おねがい開けて」
「認証が終わりました」
「これで、あなたも板橋住民です」
「わかった、おれはなあ、300年も前から板橋の住民なの!いいから、開けろ」
「住人特権として何を希望しますか?」
「いいから、トイレ、もう、トイレにいかせて」
「了解致しました。他に御用はございますか?」
「あ、あ、もうトイレ、お願い、早く一刻も早くトイレに…」
「了解致しました。他に御用はございますか?これで、最後になります」
「トイレだってんだよ!早くしろ!」
「かしこまりました」

壁かと思われたドアがプシュ〜と開き
表れたのはトイレまさしくトイレだった。

あわてて飛び込み。用をすませた私は少し、落ち着いた声で先ほどの受付を呼び出した。

「あ〜、君。服を用意してもらえないかな?」
「あなたの、住民特権は全て使い果たしました。あなた様には世界で一番高級なトイレ3ユニットを区の方からプレゼントされました」
「じゃあ、服も無し?」
「はい」
「私は末期癌を治療に未来に来たんだが…」
「末期癌でも簡単に直る注射が発売されました。どうぞ、お買い求め下さい」
「わたしの貯金はいくらあるんだ?」
「2000万円ほどです」
「じゃあ、それで、服と注射を買ってくれ」
「2000万円ですと、パンツも買えません。物価が高騰しました」
「その為に板橋区では冷凍住民に3つの願いを叶える事になっております」
「じゃあ、たのむよ」
「あなた様は3つともトイレを希望し、無事願いを叶える事が出来ました」
「じゃあ、女房はいるか?一緒に冷凍になったんだ」
「はい、無事に解凍して、となりの」
「となりの?」
「トイレに住んでいます」
「あ〜 やっぱり!」
「不思議なんですよね。冷凍から冷めた方の半数以上はみなさんトイレをご希望なさいます。どうして、みなさん3つも欲しがるのか、昔の人の考える事はさっぱりわかりません」

「いたたた」とまた、波が襲ってきた私は
あわててトイレに駆け込んだ。

▼Back

presented by kuwajima