感動

「う、うまい!これはいったいなんという料理だ」
「え、ただのカツ丼ですけど」
「こんなにカツ丼はうまかったんだな」
「う、うまい。なんだこの飲み物は」
「え、ただの麦茶ですけど」
「うまい、麦茶だな〜」
「ところで、君の接客態度は実にいいな。まるで、ここは三ツ星レストランのようだよ」
「はあ、ただのいなかの定食屋ですけどね…」
「ごちそうさん」
「うわ〜、実に素晴らしい商店街だな」
「うわ〜、きれいな夕焼けだ〜」
「おお〜、なんというかわいい子供だ」
「これは、すごい。はきごこちの良さそうな靴だな」
「いや、この焼き鳥屋の匂いは…まったくたまらないな」

「ただいま〜」
「おかえり〜」
「おお〜、なんてかわいい奥さんなんだ。俺は幸せもんだ」
「何言ってんの。御飯できてるわよ」
「いや、さっき、食べ…。うわ〜なんだこのいい匂いは」
「何ってさんまですよ」
「さんまって、ただのさんまじゃないな。ただのさんまがこんないい匂いするもんか!」
「ただのさんまですよ。なにいってんの」
「うあ〜うまい!うますぎる!なんだこのごはん!ホントに米か?」
「はいはい、ごめんなさいね。安いお米で」
「いや、違うんだよ。本当においしいんだよ」
「あらそう?炊きたてだからかしら」
「うわ〜なんだ、このおしんこは、
うまいじゃないか。これだけでごはん何杯食べられるんだ!」
「うふふ、おかしい。なにかあったんですか?」
「いや〜、生きるっていいね。」
「あ、あと、いつもの出して」
「はいはい、あなたツナ缶好きだもんね〜」
「あ!」
「なに!?」
「ごめんなさい。わたし、ここ2、3日ネコ缶、出しててたみたい」
「ネコ缶って、猫のエサだろ。ひどいな〜。でも死にはしないから、大丈夫だよ。はははは」
「はは、ほんとごめんなさいね〜」

 

缶詰には
「猫大好き!猫も感動がおさまらにゃい。感動のおいしさだニャン!」と
うたい文句が大きく書かれていた。

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