千円

某ファミレスにて…

「お前、千円もってる?」
「あるけど?」
「ちょっと、ここのテーブルに出して」
「え!なに?」
「まあ、いいから」
「なんだよ。ほら出したよ」
「じゃあさ、この千円ちょうだい」
「やだよ」
「じゃあ、いくらならくれる?」
「え?」
「じゃあさ、なんでもいいから1円ちょうだよ」
「なんだよ。それ」
「いやだから、この千円の中の1円分だけちょうだい。」
「まあ、1円ならいいけど」
「じゃあさ、10円ちょうだいよ」
「うーん」
「俺とお前えの仲で10円もだめなのかよ」
「いや、いいけど」
「100円は?」
「え、100円はちょっと」
「じゃあ、90円」
「え、うーん」
「じゃ。80円」
「まあ、それくらいならいいけどね」
「じゃあさ、この千円の中の80円は俺のね」
「え?」
「いや、この千円の中の80円分の面積は俺のね」
「いや〜」
「まあ、まあ、きいてよ。これから、この千円は俺の許可無しには使えないでしょ?」
「え?だったら、80円やるよ」
「いや〜、この千円の中の80円をもらったんだって」
「なんだよそれ。ちょ、ちょっと千円盗るなよ」
「ちょっと待てよ。これはたしかにお前の千円だけど、その証拠はどこにあるのよ」
「証拠って…さっき出したの見ただろ」
「ううん、見てない」
「じゃあ、この札に名前は書いてある?」
「…」
「ないよな」
「じゃあ、このお札の番号言える?」
「え、そんなの知らないよ」
「俺は言えるよ UK021115C」
「それ、今見たからだろ」
「でもさ、番号まで知ってる俺と、知らなかったお前では、
どっちが千円の持ち主ぽいかな?」
「そりゃあさあ…」
「お前が持ち主だって証拠はあるの?」
「指紋がついてるよ」
「俺のもな」
「これはさあ、つまりはえん罪なんだよ」
「?」
「つまり、今、裁判でこの千円の所有を争ったら、
お前が負ける可能性が高いんだ」
「裁判?」
「そう」
「最低でも、半分以下の可能性だ」
「つまり、この千円の所有権利は、今、半々なんだよ」
「え!そうなの?」
「そうだ!」
「そこで、さっきの話に戻るが、
 さっきお前は俺に80円くれるって言ったよな」
「う、うん」
「つまり、このお札の権利は俺が580円で、お前が420円なんだ。
わかるか?」
「たぶん」
「で、このお札は、半分以上の権利のある。
 おれが使う権利を多く有しているんだ」
「うん」
「つまり、お前の権利よりも俺の権利の方が高いんだ」
「うん」
「よって、とりあえず、俺が保有する権利があるんだよ」
「え!だって…」
「まあ、まて 言うな わかってる。お前の言いたいことはよく判る。
だけど、これは公平な裁判によるものと同じなんだよ。
理由はどうあれ、判決は出ちゃったんだ。なあ、もうあきらめろ。」
「え、でも」
「おれはいいよ。最高裁でもなんでもいってくれ」
「だけど、お前、そのためにいったい。いくらのお金を使うんだ?
弁護士費用もばかにならんぞ。もちろん休みだって無くなるだろうし、
裁判終わるまで何十年かかることやら、それまでお前結婚出来ないぞ!」
「え、結婚出来ないの?」
「あたりまえだよ。だれが、そんな抗争中の家に嫁にくるんだ」
「そうだよね」
「わかった。お前のいい分はわかったから、じゃ、ここで略式最高裁をしよう」
「え、やってくれるの」
「当たり前だよ。かわいいお前の為だもん。
ちょっとたかいぞ、最高裁だからな。そうだな今までの十倍くらいか?
じゃ、まずはお前、ここに一万円置け!」

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