娘さんをぼくにください

「お父さん、娘さんをぼくにください」

「…」

「パパ」

「あなた、なにか言ってやったら」

「必ず、幸せにします」

「…」

「あなた」

「無理」
「お父さん、お願いします」
「パパ」

「無理…でしょう?」
「なんで、ですか?ぼくがお父さんより年上だからですか」
「…」
「パパ」
「あなた」

「ぼくが88才だから、おとうさんはそんなことを」
「パパ」
「あなた」

「ぼくは、お金ならイヤってほど持ってます」
「パパお願い」

「ガンにも侵されているから、そんなに先は長くないですよ」
「パパ」

「娘さんがお金目当てだってことも知ってます!」
「パパ、お金目当てなんだから"うん"っていって」
「あなた」
「…」

「ぼくは、もうEDだから、そっちも無理です。だから」
「パパ、こんな都合がいい人いないのよ」

「お願いします。人生最後のお願いです。娘さんとの結婚を」
「あなた、この人残り少ないんですから、もって1年ですって,すぐですよ」
「…」

「おとうさん、いや、鈴木くん、どうしてもだめか?」
「社長」

「鈴木くん、ぼくが、あなたの会社の社長だから?」
「社長」

「君がいまだに平社員でいじめられているから?」
「おとうさん、あなたの給料じゃやっていけないんですよ」
「パパ」

「君をさんざんいじめたのは悪かった。だから」
「社長」
「娘さんをぼくに」

「社長、じゃ、次期社長はわたしって事ですか?」
「…」
「それは…無理」
「パパ…無理よ」
「あなた…無理ですよ」

「じゃ、部長くらいに」
「…」
「それは…無理」
「パパ…無理よ」
「あなた…無理ですよ」

「じゃ、係長でも」
「…」
「それは…無理」
「パパ…無理よ」
「あなた…無理ですよ」

「じゃ班長」
「…」
「それは…無理」
「パパ…無理よ」
「あなた…無理ですよ」

「じゃ、平でもいいから、給料を10万アップを…」
「…」
「それは…無理」
「パパ…無理よ」
「あなた…無理ですよ」

「5万…いや3万でも」
「…」
「それは…無理」
「パパ…無理よ」
「あなた…無理ですよ」

「じゃ、3千円」
「…」
「それは…無理」
「パパ…無理よ」
「あなた…無理ですよ」

「じゃ、なんでもいいから、わたしにもなにかください」
「…」

「じゃ、おとうさん、これを」

「…」
「…」
「…」

「ごめん、今までだまして」

「いや〜〜〜〜〜」

「どうしたんだ?」

「あたし、ハゲだけは〜〜〜〜〜〜〜〜〜いや〜〜〜〜〜」

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