先輩と後輩


「あ、あの先輩!」

「ん?」

「あ、あの」

「なんだ?」

「あ、あの…かいいいんす」

「かいい?」

「はい」

「痒いのか?」

「はい」

「じゃ、掻いてやるよ」

「い、いや、違うんす」

「いいから、掻いてやるよ。
 しょうがね〜な。」

「違うんす」

「なんだよ」

「いや、大事な所がかいいんす」

「掻いてやるよ」

「いや、そうじゃないんっす」

「なんだよ?大事って」

「大事な所は大事な所っす!」

「そんなに大事ならしまっとけ!」

「いや、しまってあるっす」

「なんだよ。はっきり言えよ!」

「じつは…おちんちんがかいいっす!」

「なんだよ。そんなとこか
 しょうがね〜な
 じゃ、出せよ
 掻いてやるから」

「いや、違うんす。掻いてほしいんじゃないんす」

「違うって?」

「いや、こないだ、ほら先輩に連れられて行ったじゃないすか」

「ん?」

「ほら、場末で汚いもう〜オバはんのところに」

「ん〜?」

「ほら、一人8千円だって所を、
 それだって安いのに
 先輩が無理矢理、2人で
 3千円にしちゃった所っすよ
 ババ〜ツバはきながらやった」

「ああ〜、あそこか!
 もうちょっと粘れば2千円になったな!
 それもしても、嫌な奴だったな
 おれがチェッカーズのフミヤだったら
 絶対、あんな扱い受けないのにな!」

「先輩、フミヤじゃないっすからね」

「フミヤだったら千円になったな」

「タダでしょう。
 でも、フミヤはあんなとこ行かないっすよ」

「それはわからんぞ」

「そうっすか?」

「おれが行くんだから
 フミヤだっていくだろう」

「先輩がいくところは
 フミヤはいかないっすよ」

「人は縁ってものがあるからな。
 前世は同一人物の気がすんだよ」

「前世が同一人物はありえないすよ」
 
「またいきたの?」

「いや、もういいっす
 つまり、そこにいってから
 痒くなっちゃったんです」

「じゃ、おまえ、俺のせいだってのか?」

「いや、違うっす!先輩は大丈夫なんすか?」

「おれか?」

「はい」

「痒いかってことか?」

「はい」

「痒くね〜」

「ほんとすか〜?」

「ああ〜」

「じゃ、おれだけですか…」

「…かゆかね〜けど
 …いて〜」

「いて〜って
 おれより症状進んでねーすか」

「そうか?」

「どれくらい、いたいんすか?」

「ん?まあ…
 …無茶苦茶いて〜」

「むちゃくちゃって、やばいじゃないすか?」

「いいんだよ。俺の事は」

「は?」

「俺さえ、がまんすりゃいいんだから
 それより、お前だ!
 ほら、掻いてやるから
 出せよ!」

「いいすよ
 それより、医者に行きましょうよ」

「俺はいいんだよ」

「なんでですか?」

「あいつら、まけね〜んだよ」

「先輩にかかればなんでも5割引ですもんね」

「いや、8割引だ!
 だいたい原価なんて2割なんだよ
 だから、俺はサービスをもとめない!」

「もとめないっていても…」

「だいたい1万円札だって原価は20円ちょいだぜ、
 大損だよ。
 元が取れるのは1円玉くらいだ
 だから俺は1円が好きだ」

「先輩、お財布に1円玉しか入ってないっすもんね」

「好きだからな」

「医者がまけないのはしょうがないですよ
 いきましょうよ。お金だしますから」

「まあ、まて、
 じゃ、その金でなにかうまいもん食いに行こう」

「そんなこと言ってたら、
 痒いのなおんねーっすよ」

「掻いてやるよ」

「掻くのは自分でやりますから
 医者に行きましょうよ
 じゃないと、俺だけ直しても
 結局また先輩から廻ってくるじゃないですか」

「人生ってのはそんなもんじゃないのか?」

「そんなもんすかね」

「ああ、そんなもんだ
 じゃ、うまいもんでも食いに行くか」

「はい、先輩」

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