足跡

1年に1度だけ、誰も知らないけれど
屋根の上に足跡が
たくさんの足跡が
空からみたら、まるで子供達が大勢遊んだあとのような
そんな足跡がたくさん
ついている日がある。

そう、その日はクリスマス。

その足跡は少し楽しそうにそしてうっすらとまるで、魔法のようについている。
音がしないようにそうと歩いた事がわかるくらい繊細な足跡
そんな足跡が多くの家の上についている。

でも、あまりにも薄いその足跡が見えるのは
ほんの5分くらい
それ以上は風がすべてを無かった事にしてくれる。

そんな足跡を僕が見たのもほんの偶然だった。
8年前のイブ
僕は仕事に追われていた
すこしだけ頭を冷やそうと
8階のカーテンを開けた時
あたりはうっすらとした雪景色だった。
まだ、降り始めたばかりなのだろう。
雪が積もり始めたところと、まだつもらないところのまだら模様だった。
と思った。

しかしよく見るとそれは足跡
無数の足跡
大急ぎで働いた人の足跡が
無数にいくつもの屋根についていた。

幸せな街の風景

そんな気がしてふっとすると
もうそこに、足跡は無い

夢だったのだろうか。
ほんの瞬間、
鳥の羽ばたきくらいの一瞬見た
あの風景を、
僕は今も忘れない

 

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