猫の三太

サンタが飼っている猫の三太は、
毎年毎年、サンタの仕事を見ていたら
自分もプレゼントを配りたくなっていた。

ちょうどいいことに近所には7匹の子猫がいる。
7つ位のプレゼントなら用意できそうな気がする。
猫の三太は計画を実行する事にした。

サンタが出かけていった24日夜、猫の三太も
猫用の出入り口からプレゼントをもって出かけていった。

最初の子猫は近所でも評判の乱暴者だ
なぜ、彼がそこまで乱暴者になったかというと、
彼の家は貧乏でいつも腹をすかしていた。
そのため、だれかれかまわず、乱暴するのだ。
彼へのプレゼントはとっておきのサバ缶だ。
去年の誕生日にサンタからもらったとっておきの品物だ。

2匹目の子猫は近所で評判のかわいらしい子猫だ。
その愛くるしい鳴き声は聞いたものがみんな骨抜きになるほどである。
近所のファッションリーダーとしても有名なその子猫はみんなのアイドルでもあった。
彼女へのプレゼントは赤と白のチェックのマフラーだ。
三太のもっているもので一番かわいらしいものだ。
三太が昔、彼女にもらったものだが、あまりにもかわいいので、
もらったときに一度首に回しただけで、あとは大事にしまっておいた
宝物である。
きっと、子猫は喜ぶだろう。

3番目の子猫は街一番のひょうきん者だ。
彼の回りで笑いが途切れる事は無い
何が面白いって、もともと生まれ持った顔が面白い
それに加えてあの模様。
こうも面白い模様だと吹き出さない方が不思議なくらいだ。
そして、本人の性格も輪に掛けて楽しい。
彼は本当に猫の世界で一番のひょうきん者だ
そんな彼には、三太の家の家宝である
おじいさんの形見のシルクハットをプレゼントした。
彼のそのすっとんきゃんな顔にあの帽子が乗った事を思い浮かべるだけで、
三太は笑いがこみ上げてくる。
彼の寝顔を見ながら、笑いをこらえてプレゼントを置いていった。

4匹目の子猫は近所で評判のわがまま子猫だ。
この猫のおかげで近所中が右往左往したことが
何度あったか。
だいたい赤ん坊の頃から、このミルクは嫌だ!
新鮮なのが良いとわめきちらしていた。
服を買えば、やれ模様が悪いだの、縫い方が悪いだの、
わがままし放題なのだ。
きっと、明日の朝起きて三太のプレゼントに真っ先に文句をいうだろう。
なるべく、文句が出ないように
三太はとっておきのチョコレートをプレゼントにした。
これなら、彼女も満足の味に違いない。
それにもし、気に入らなくても食べてしまえば無くなってしまう。
大事にとっておいても暖かくなれば、溶けてしまう。
なくなってしまえば、文句のつけようもないだろう。
へたに形の残るものを渡したらそれこそ、永遠に文句を言われそうだ。
三太にとってとっておきのチョコレートがしかたがない。
しぶしぶ、プレゼントを枕元においておいた。

5匹目の子猫は近所で評判の泣き虫子猫だ。
やつが泣き始めると近所中が大困りだ。
大きな声で、ずーと泣く。そしてなかなか泣き止まない。
泣き虫とは本当に困った者である。
そんなヤツには三太一番のお気に入りのハンカチをプレゼントする事にした。
もっとも、三太はそれひとつしかハンカチを持っていないから
それ以外にあげようもないのだが、それでも、大事に使っていたものである。
手放すのは寂しいが、それもまたよしである。

6匹目の子猫は近所で評判のずるがしこい子猫だ。
こいつにひっかかって何度とんでもない目にあわされたであろうか!
こんなやつには本当はプレゼントなんて上げたく無いのだが
今回はしかたない、手作りのロボットをプレゼントした。
しかし、そのまま渡してもしゃくにさわるので、
実はロボットの目はハナクソでできている。

最後の子猫は近所で評判の、、、、ごく普通の子猫、実はサンタの子供なのだ。
この子は普通すぎて、もう少し個性を持ってもらいたかった。
親心としては、少しくらい、暴れん坊であったり、いたずらっ子であったりしてもかわいいものなのだ。

しかし、あまりにも平凡、才能を伸ばしてやろうとしても、平凡すぎて伸ばすところがないのである。
親としてとても心配しているのである。

まあ、そんなわけで、この子にもプレゼントを、、、、
無い、
白い袋の中にはもうプレゼントが無い!
もともと、猫の三太は、そんなに裕福ではないので、
6つもプレゼントをわたしてしまうと
三太自身一文無しになってしまったのである。
家宝も、なにもかもプレゼントしてしまった。

三太は困ってしまった。
しかたなくそこいら辺にあった板に、持って来た白い袋を貼付けて
枕元においておいた。

次の日

「パパ起きて」
三太の息子がうれしそうに三太を起こした。
眠いのである。しかし、息子のうれしそうな声
いったい何がと思っていると

「ほら、サンタさんがプレゼントをくれたんだ」
いったい、なんでそんなにうれしいのだ?
そうか、本物のサンタさまが不憫な息子にプレゼントを置いていったに違いない

そう思って飛び起きてみると
息子の手には昨日渡したがらくたが、、、、
三太はがっかりした。
息子はうれしそうに
「ほら、真っ白なキャンパスをプレゼントされたんだよ。パパ!」
そういって、三太の息子は絵を描いた。

すると、なんて素晴らしい絵だろう。
心がとても穏やかになる。とてもいい絵を描くではないか。
三太は息子の才能を飛び上がってよろこんだ。

息子はそれ以上に喜んで絵を描いた。

猫の三太のお話である。

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