サンタクロース

人間だけにサンタがいると思うのは大間違いである。
猿には猿の
パンダにはパンダの
蟹には蟹のサンタがいるものである。

ある時、パンダのサンタが言った。
「パンダのプレゼントは笹に決まっている。
だが、たまには違う物も上げてみたいものだ」
そういって木の玩具をひとつだけ作ってみた

それほど手先が器用でもないパンダのサンタは
不恰好な人形をひとつ作り上げた。
「これでは、とても子どもたちに喜んでもらえるとは思えんな」
「やはり、今年も笹にしよう」

そういってイブの夜に出かけていった。

最後の家でのこと
サンタは「こまったこまった」と困っていた
やりなれないことをしたせいだろうか?
どうしてもプレゼントが一つ足りない

残っているのは不恰好な人形だけ

「しかたがない」
そういって、パンダのサンタは不恰好な人形を置いていった

次の朝

パンダの子供たちは喜びの声を上げた
ただひとりを除いては

「うわー、おいしい。こんなに美味しい笹は初めてだよ」
そんな声が響きわたる中、ひとりだけぽつーんと
不恰好な人形を見ている小さいパンダがいた。

ためしに頭をかじるパンダ
まずーという顔はとても困惑していた。

僕だけが笹をもらえない
なぜ?
不細工だけどなぜか愛嬌のある人形
周りはおいしそうに笹をかじる子供たち
なぜ?
ぼくも、みんなと同じ美味しい笹がよかった。

そんな時、ママがやってきて言った一言
「おめでとう」
「?」
小さなパンダは意味がわからない
「あなたにおとうとが出来たのよ」
「?」
この人形のこと?
ママが指差したお腹に小さな小さなパンダが張り付いていた

やったー
ママ、とてもすてきなクリスマスプレゼントだよ

ママはまだおとうとを触らせてくれない
パンダは人形をおとうとのかわりにしていっしょに遊んだ。
本当のおとうとが人形と同じ大きさになるまで。
いや、なってからも

パンダの不細工な人形はおとうと共に大切なものになった。

 

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