クリスマスの別れ

「え、この時期に別れてなんて、もうすぐ、クリスマスじゃないか」
「この時期だから別れてほしいの」
「なんで?もう、プレゼントも買ってあるし、レストランだって予約してあったんだよ」
「あたらしい彼ができたの。あなたとは、ここまで」
「やだよ。じゃ前日でもいいから」
「前日用の彼もいるのよ」
「じゃあ、その前でも後でもいいから」
「あなたは、はっきりいって7番目だったの。
 でも、一人増えたから、もう曜日で余ってないのよ。ごめんね」
「わかった。じゃ、じゃ、今日、今からクリスマスやろう」
「いやよ。クリスマス最初の相手があなたじゃ、縁起がわるいよ」
「そんな〜、なんで付き合ったの?」
「付き合ってないわよ。あなたが勝手に勘違いしてただけでしょ」
「そうなの?」
「そうよ。あーもう、坊ちゃんだかなんだか知らないけど
 あんたの、そのトロイ感じが虫酸が走るわ。悪いけどもう話しかけないで
 気持ち悪。」
「そうか、わかった」
「じゃあ、もうクリスマスからヨーロッパだな」
「ふーん、ヨーロッパいくんだ。馬鹿坊ちゃんよね」
「いや、母がパリにすんでるから」
「おかあさんが?」
「父はNYだし、正月はいつも母のところで過ごすのが恒例なんだ」
「お父さんはなにをやってるの?」
「ん、父も母もデザイナーで、母はシャネルのデザイナーをやって、父は自分のブランドをもってやってるんだ。けっこう欧州ではセレブの人気が高いんだぜ」
「へー」
「まあ、自家用ジェットだから、チケットとかは心配ないから、自由に行き来出来るんだけどね」
「へー…、ねえプレゼントは何をもらえるはずだったのかしら?」
「ん、シャネルのジュエリー」
「へー、いくらの?」
「ん、値段はないんだ。母がぼくの為につくったオリジナルのファインジュエリーだから」
「オートクチュール?ってこと」
「ちょっと違うけど、まあ、そんなところかな」
「へー」
「レストランはどこ予約したの?」
「NewYorkのイタめし5番街の」
「へー、うまいの?」
「うまいよ。とりあえず、世界最高だからね」
「ふーん、すごいね。じゃ、これで」
「じゃ」
「もう、声かけないでね」
「ああ」

「やっぱり、うそはバレルか。」
と100円ライターでタバコの火を付けつぶやいた。

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