大きいモノ

大きいことはいいことだと言うが、それは、標準より少しだけ大きい時に当てはまる言葉だ。あまりにも大きいと誰も受け入れてはくれない。彼の大きさはあまりにも大きいために誰も受け入れてくれなかった。あまりにも標準とはちがうのだ。最初は彼の大きさに男達が気づき騒ぎ始めた。あまりにも自分と違う大きさに周りの男達は最初驚き、はしゃいだが彼の大きさが桁違いだったために、次第に彼から離れていった。彼のモノからすると自分の小ささに男としてのプライドを傷つけられたのだろうか?誰も彼の周りに近寄ろうとしなくなった。やがて女も彼の大きさに気づき出す。男達と違って徒党を組むことはなかったが、誰一人彼を受け入れる事は出来なかった。彼の大きさに自分が壊れてしまいそうだったからかもしれない。やがて女も離れていった。女は時たま、彼の大きさに興味を持って近寄ってくるが、あまりの大きさに誰もがすぐに離れていってしまう。彼の姿は見た目は普通で、最初彼がそんなに大きい人だとは、誰も思わないだろう。だけど、彼の大きさを知ったとき、ある者は羨望の眼差しである者は、奇異なものを見る目で彼を見るのだがそれもつかの間、結局は彼から離れていくしかないのだ。

彼はひとりぼっちだった。彼はその大きいモノを隠そうとしたが、隠せるものではなかった。彼は彼の大きさに合う女性を捜しに旅に出た。だけど出会わなかった。もしかしたら、いたのかもしれないが、女性は隠すのがうまかった。彼はその大きさを隠せなかったから、女からは結局彼に声が掛からなかった。彼を包み込むほどの女は結局現れなかった。

彼は老人になりますます大きくなっていった。町はずれの一軒家にひっそりと住んでいた。彼はその大きくなっていったモノが処理できなくなっていた。
もうあふれるだけあふれてしまっているのだ。彼は裏庭に象を飼った。またこの象も、つぶれた動物園が、どうしてもこの年寄り象だけが行き場所がなかった。年老いた雌の象だ。彼女だけが彼のこの大きくなってしまったモノを処理できた。はじめて心が通じ合えた。彼は満足だった。彼の大きさはちょうど象のそれと同じようだった。彼と彼女はお互いを受け入れた。

彼の所にはたまに子供が迷い込んだ。町はずれに住んでいたために、象を見ようとこっそりと子供がやってきては帰れなくなり助けを求めてやってくるのだ。彼はその大きさで子供を包み込んで家に帰してやる。彼は多くの迷子を家に帰して死んでいった。象は彼が死んでから3日とたたずに死んでいった。なぜか、彼が死んでからその町で迷子が出たことはなかったのだが、目当ての象も死んでしまっているのではそれもあたりまえかもしれない。

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