たぬき御殿

たぬき御殿に住む
池の鯉が口をパクパク
開けながら、主にむかって
「オイ、お前のくれるメシは
どうも、うそくさくていけない
本当においしい物をくれ!」
主は「お前のメシは
俺が嘘をついて買ってきた物で、
ウソ臭いのはしかたがないが、
本物のおいしいエサのはずだが?」
「それもうそだろう?」と池の鯉がいうと
「ほんとだて、さて、そうすれば信じてもらえるのもやら」
「だいたい。最近俺様の糞が
緑色になっている。
これはお前が俺をだまして緑の木の葉を食べさせているにちがいない」
「はて、それはおかしい?
もともとおぬしの糞は緑なのではないか?」
「おれは糞の話などしとらん
メシの話をしているのだ」
「そうじゃった。そうじゃった。
はて、お前の食べたい物はなんじゃ」
「うまいものじゃ!」
「なにが、うまいのじゃ」
「おれは、うまい物を食うた事がないから知らん」
たぬきはありったけの豪華な食べ物を池に投げ込んだが、
「これもまずい。あれもまずい」といって鯉は納得しなかった。
「まったく。お前はまずい物ばかりを俺に勧めやがって
こんなことなら、岩についたコケでも食べていた方がましだ」
といって、岩についた緑のコケをうまそうに食べた。

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