カブトムシ

ぼくのカブトムシたる由縁の角が最近とれて来てしまった。
実際にこれで若いカブトムシと戦ったたら、
一発で打ちのめされてしまうだろう。
もう、メスカブトと豪遊する事もないのだろう。
あの夏のメスはどこにいってしまったか。
蜜から蜜へ羽を広げて飛び回ったあの夏はもう無い。
木の密だってどこにもない。
だいたいこの寒さではもういくばくかの時間しか残されていないだろう。
そんな事を考えて枯れ葉の下に寝そべりいじいじしていた。

まあ、もうダメだと思っていてもお腹は減る物で
少しだけ歩き回っていたら、
意外な事に、
あの夏のメスカブトに出会う事が出来た。
老けたな〜と思って声を掛けたが動かない
あ、死んでる
あんなにかわいかったのに
もう半分土になってる。
よくみるとなにやらその回りに白い物が動いてる
あ、俺の子だ。
ああ〜母ちゃんよくやった。
うんうん、無事に育ってるぞ〜

どうやら、俺の死に場所も決まったらしい。
メスの隣でじっとしていると
なにやら体がかゆくてしょうがない
ダニだ
まあ、母ちゃん半分腐ってるし
しょうがないんだけど
うわ、かい〜

僕はそこから離れて逃げ出した。
僕はカブトムシだから、子供の頃の記憶はいっさいないけど
意外といい人生だったと思いながら
適当な場所で眠りました。

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