牛山乳子の隣には

乳牛の牛山乳子さんの家の隣には
肉牛の牛島牛男さんが住んでいる。

彼の方が
ずいぶん年下なのだが
積極的にアタックされたせいか
彼女は彼と付き合う事にした。

彼女にとって最後の恋になると思った。
それもごく短い期間だと覚悟していた。

それでも、彼の猛烈なアタックに
彼女の心も折れた。

彼女の初恋は生後1年の時 隣の隣に住んでいた雄牛だった。
しばらくは楽しく付き合っていたが、
ある日、そう彼が4歳になってすぐ彼はいなくなった。

その次の恋も そのまた次の恋も
4歳の誕生日前後にみな、こつ然と消えてしまう。

そんな つらい恋を何度も味わった。
もう恋などしないと何度も決めたが
彼女は乳牛
恋をしないという選択はありえないのだった。

彼女もずいぶん年寄りになってしまった。
しかし、それも、若い牛達には魅力に映っているようだった。

彼女は考えるのを止め、
牛男と最後の恋を楽しんだ。

やがて、うれしい事も起きた。
牛男の子どもも身ごもり、無事産まれたのだ。
彼の4歳の誕生日だった。

明日の朝 この子を見せるのを楽しみに
彼女は眠った。 
出産の疲れだろうか、
彼女は寝坊してしまった。

そして彼は

いなくなっていた。

なぜ、いないのか
彼女は知らない。

乳子は寂しそうに空を見上げた。

彼女には赤ちゃんに乳をあげる事も出来ないのだ。

最後の恋が終わった時に 彼女の乳も止まってしまった。

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